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[第5回] 人生とビジネスの成功のカギ

人生とビジネスの成功のカギ
「人間関係」を計量するために
社会での成功に人間関係は不可欠。従来、人文領域と思われてきた社会学は今、数学を道具に人間関係を客観分析する手法を見出した。
■ 人間関係を数値化する「社会ネットワーク分析」
 企業内で管理者としての地位をめざすとき、または経営者として競争力ある企業をつくろうとするとき、組織内での人間関係のありようが、その「成功」に大きな影響を及ぼす。これはどのような集団であれ、その中で力をふるおうとするときには必ず経験することだ。

 その事実を感覚的に把握することは易しいが、逆に目的に沿って人間関係を戦略的に構築・改変していくことは難しい。人間関係のネットワークは常に複雑で、その構造の把握さえ不可能なことが多いからだ。

 「しかし、社会ネットワーク分析の手法を使えば、組織の人的なネットワーク構造をうまく説明することができます」と語るのは(財)政治経済研究所・社会調査室研究員の金光淳氏。金光氏は日本ではまだ数少ない社会ネットワーク分析の研究者の一人である。研究の傍ら、企業や各種団体の組織に関するコンサルティングも行っている。

 「この種の分析には、従来からの統計的手法では限界があります。そこで、人と人との関係性に注目し、つながりとその「強度」を測定してグラフ化することにより、社会構造や現象を説明しようというのが社会ネットワーク分析です」(金光氏)。

 人間関係を客観的に分析するという社会ネットワーク分析とはどのようなものだろうか。金光氏の調査・研究の一端を次に紹介しよう。

拡大図

拡大図
ある知的生産部門の知識ネットワークと
ソーシャル・キャピタルの測定

データ(上) (拡大図)
とグラフ (下) (拡大図)
■ キーパーソンは誰なのか
 まず例題で考えてみよう。【図1】はある企業での人間関係を表現したグラフである。点は個人を示し、線は人と人とのつながりを示している。この中で「ビル」と「スー」に着目したとき、管理者として成功する可能性が高いのはどちらだろうか。

拡大図
【図1】企業内の社会ネットワークの例
(拡大図)
 一般的には「スー」が答えだ。「この企業には大小四つのグループがあることがわかります。「ビル」は一つのグループの中に六つのつながりをもっており、「スー」も同じ数のつながりをもっています。でも、スーのつながりはすべてのグループに及んでいます」。

 つまり、ビルは自分が属する限られたグループ内でのキーパーソンでありうるが、スーはネットワーク全体とのつながりをもつので、企業全体のキーパーソンということができる。仮にスーがいなくなったとしよう。すると、この企業の四つのグループは全部ばらばらになってしまうのである。

■ 組織内のネットワーク構造の把握と評価
 実際の分析は、【図1】ほど単純ではない。金光氏によるある福祉施設内の社会ネットワークの分析例をお目にかけよう。【図2】は、メンバー全員に各個人との人間関係を、例えば「コミュニケーションをよくとっているか」という質問に対して4段階で応えてもらうなどの方法で調査した結果を、人と人とのマトリックスで表したものの一例である。

 図中の明るい色の部分が、相関関係の度合いが強いことを示している。またグラフの中央に近い領域ほど、全体との相関が強いことを示している。これを見ると、白っぽい部分の集まりが三つある。これはデイケア、専門(調理)職、特養という三つの部門をそのまま表している。


【図2】特養ホームにおける職員のネットワークのクリーク(派閥)構造を図式化したもの
(拡大図)
 「なかには、放射線状に十字に結合を伸ばしている人もいますね。この人は他のグループとのコミュニケーションがとれている人。【図1】のスーのような、キーパーソンと考えてよいでしょう。また、『相談員』はネットワークの中央近くに位置しているので、コミュニケーションの中心として役割をよく果たしているようです。しかし相談員よりも中央に位置する人もいます。実はその人が隠れたキーパーソンかもしれません」(金光氏)。

 このようなグラフを用いた分析を、他に仕事協力ネットワーク、仕事助言ネットワークといった側面から同じように行うことにより、金光氏は同施設の社会ネットワークの構造を明らかにし、各メンバーのネットワーク上での役割を目に見えるようにした。

■ 「グラフ理論」パッケージが可能にした分析
 上に見るように、社会ネットワーク分析にはグラフ化、可視化のプロセスが欠かせない。金光氏の研究は、10年前のMathmaticaのグラフ理論パッケージによって加速された。

 たくさんのデータを扱い、構造を可視化するにはコンピュータ処理が不可欠である。それがパソコンレベルで可能になったのだから、当時の氏の喜びは想像に難くない。「独自に作ったプログラムで研究成果が出たときが一番うれしい」と語る金光氏は本当に楽しそうだ。

拡大図 拡大図
ザンビアの亜鉛工場の電解作業室の15人の結合関係
共有する部分が多いほど労働者間の結合は強い。

強度の強弱を考慮せずに描いたもの(左) (拡大図)
結合の強い関係だけで描いたもの(右) (拡大図)

 社会ネットワーク分析の応用範囲は、組織論にとどまらず、企業権力や地域内権力の研究、あるいはマーケティングなど、人間関係が重要な要素となるあらゆる領域にわたる。今後、社会ネットワーク分析の手法や考え方は、人生やビジネスの成功への大きな手がかりとして、ますます活用されてゆくことだろう。
関連する書籍を紹介しています。
金光氏の著書「社会ネットワーク分析の基礎 社会的関係資本論にむけて」を紹介しています。
人間関係って曖昧なものもですが、やり方によっては、こんなに明確に数値化、可視化できてしまうものなんですね。組織内での自分の働きが明らかにされるのはちょっと怖い気もしますが、他の組織なら見てみたいと思いませんか?僕は自民党なんかが気になります。いったい誰が本当の実力者なのか、スッキリと分かりそうです。(曽根)

社会ネットワーク分析という言葉自体はじめて耳にしましたが、説明を聞くと全ての社会現象において人と人、もしくは会社と会社といった繋がりが実は非常に重要であるとか。この手法で色々な企業の組織構造を覗き、その企業の業績との関係を知りたくなりました。 (小林)

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