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数学体験 お話(ジャイアント馬場と矢口真里が暮らす部屋)

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背が伸び縮みする「エイメスの部屋」

あこがれの有名人。一緒に暮らしてみたい思ったことはないだろうか? ここに、自由に身長を変えることができる「謎の部屋」があります。ちょっとのぞいてみよう・・

 もし、壁に空いた小さな穴から光が漏れていたら迷わず覗く、それが人間だ。 他人の部屋から何やら怪しげな声が聞こえれば、ドアに頭を押しつけて聞き耳をたてる

 そんな人間であるあなたの前に壁があり、壁の向こうには「謎の部屋」がある。 そして、そのあなたと「謎の部屋」の間を遮る邪魔な壁に小さな覗き穴が空いていたら、あなたは一体どうするだろうか? そう、もちろんその穴から不思議な部屋の中の様子を覗いてみるに違いない。
 好奇心のかたまりとなって、その「謎の部屋」を実際に覗いてみたのが右下の図である。
 すると、あなたが「覗き穴」から片目で眺めた「謎の部屋」はごく当たり前の普通の部屋に見える。 壁には窓があって、床は普通にフローリングされていて、部屋の中にはずいぶんと背の高さが違う人が二人立っていることがわかる。 その「謎の部屋」の中ではジャイアント馬場(身長209 cm)と矢口真里(身長 145cm)ほどに、まるっきり背の高さが違うように見える二人が立っているのである。 (今は亡き)大きなプロレスラーと小さなアイドルが二人立っているように見えるのだ。

馬場と矢口が立っている部屋
拡大図
ペーパークラフトの模型の例
(拡大図)
 しかし、実はこの二人の身長は全く同じなのである。 この「謎の部屋」は「エイメスの部屋(Ames room)」と呼ばれる特殊な作りになっていて、部屋の中のどの場所に立っているかにより、(覗き穴の外から眺めた)身長がまるっきり違うように見えてしまうのである。 部屋の左と右では実は覗き穴からの距離が違っているのだが、その距離に応じて部屋の高さを部屋の左右で変えることにより、その左右が奇妙な形状をした部屋が「覗き穴から眺めてみると」綺麗に四角い部屋に見えるのである。覗き穴の視点からの遠近感を「帳消し」にするような形状にすることで、「エイメスの部屋」を覗き穴から覗くと普通の四角い部屋にしか見えないわけである。

エイメスの部屋
 というわけで、「覗き穴」からは綺麗な部屋に見えるけれども、実は部屋の高さと距離が左右で違っているわけで、誰かが視点(覗き穴)から近い側(そして部屋の高さも低い)に行くと、その人は部屋に比べてひどく大きく・背が高く見える。 そして、同じ人が視点(覗き穴)から遠い側(こちらの部屋の高さは高く作ってある)に行くと、その人は距離に応じて大きく作ってある部屋に比べて(その人自身は遠くにいるので小さく見える)ひどく小さく・背が低く見える。 そのため、例えば誰かが部屋をトコトコ歩いて行くようすを外から眺めていると、いきなりその人の背の高さが伸びたり縮んだりしてしまうように見える不思議な部屋「エイメスの部屋」ができあがるのだ。
 というわけで、上の図は右に立っている巨大なジャイアント馬場は単に覗き穴から近いところに立っているだけで、実際には左に小さく見える矢口真里と同じ身長・同じ大きさなのである。ジャイアント馬場と矢口真里が一つ屋根の下で暮らしているわけではなく、実は同じ背格好の人間が二人立っているだけなのである。
  実際に部屋を動かして眺めて見ると、「エイメスの部屋」が特殊な作りになっていることがわかる。他の視点から眺めてみれば、この部屋は決して四角い普通の形ではなく、何とも奇妙な形であることが実感できることと思う。
 「エイメスの部屋」を他の視点から眺めてしまうと、仏の四角い部屋でなく、奇妙な形状の部屋であることが判ってしまうということは、「エイメスの部屋」のトリック・魔術にひっかかるのはただ一点から眺めた場合だけなのである。 違う視点に移動して、「エイメスの部屋」を覗き眺めてみれば、全然不思議でもない(ただヘンな形をした)部屋になるだけなのである。

他の視点から見た「エイメスの部屋」
視点位置(覗き穴)は左であり、視点
から見た左右がずいぶんと歪んだ
形の部屋になっている。
 こんな風に、「エイメスの部屋」の中では本来同じ背丈の人が背が高く見えたりも背が低く見えたりもする。同じ人であっても、その人との距離や・その人の後ろに見える背景のせいで大きく見えたり小さく見えたりする。 だから、片目をつぶり、もう片方の目だけで特殊な場所を覗いてみると「右に歩けばジャイアント馬場、左に歩けば矢口真里」なんていう魔術や幻想が生じたてしまったりするのである。  「背比べ」に絶対的な基準があるわけでもなく、「比べ」というからには、それは単に相対的な高低・大小の比較に過ぎない。 となれば、こんな「エイメスの部屋」のような細工された場所、歪んだ世界を距離感を失いながら眺めてしまうと、途端にあるはずもない「ジャイアント馬場と矢口真里が暮らす部屋」が出現してしまう、というわけなのである。 いや、「あるはずもない」と言ってしまうと、(今は亡き)ジャイアント馬場に失礼な話だが。

 詳細は、平林 純氏のホームページ(hirax.net)をご覧ください。



実際に、部屋の大きさや人物の身長を変更するとどのように見えるか、試してみることができます。部屋をぐるぐる回転し、視点を変更してみましょう。

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