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先端技術ラボ デジタルヒューマン
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長谷和徳氏インタビュー
   「人間中心設計のためのデジタルヒューマン」
 自動車の衝突実験で人間のダミーをコンピュータモデルにしたものをご覧になったことがありますか?より人間にとって使いやすい「ものづくり」ができるように、人間の身体機能をデジタル化し、モデル化したものがデジタルヒューマンです。今回は、人と機械のよりよい関係を目指した研究を行っている名古屋大学の長谷氏に、デジタルヒューマンについてお話を伺いました。連載のイントロダクションとしてお読みください。
長谷氏
名古屋大学大学院工学研究科 助教授 
   機械理工学専攻 長谷和徳氏
1991年 慶應義塾大学大学院理工学研究科修士課程修了後、(株)日立製作所生産技術研究所へ入所。1993年慶應義塾大学大学院理工学研究科生体医工学専攻博士課程へ戻り、1997年博士(工学)取得。1997通産省工業技術院生命工学工業技術研究所(現、独立行政法人産業技術総合研究所)、2003年より現職。途中1996年より1年間国立身体障害者リハビリテーションセンター研究所、2000年より1年間英国オックスフォード大学。

研究室ではどんなことをしているのですか?
 名古屋大学では、実質的に小講座制をとっています。我々のところでは、大日方教授を中心に、私、助手の中山先生、そして、学部生8名、修士が15名います。このうち、女性は2名です。

 研究室の研究テーマは、狭い意味では「福祉工学」。広い意味では、「よりよい人間と機械との相互関係のあり方の研究」です。ちょっと抽象的になりますが、我々は「人間中心設計」をキーワードとして、お年寄りや障害者の方を支援するような、車椅子や歩行の支援技術の開発をはじめ、人の機械のより良い関係を目指した研究を行っています。

運動計測用車イスと解析モデル
運動計測用車イスと解析モデル
授業ではどんなことを教えていますか?
 面白いところでは、学部1年生を対象にした基礎セミナーという教養科目があります。10名ほどのゼミ形式で、データ収集やプレゼンの練習をさせる、というのが共通のテーマです。私は「福祉工学」というタイトルで、関節が曲がらなくなったり姿勢が猫背になったりして高齢者の身体特性を疑似体験できるグッズを用意して、実際に体験してもらったり、車椅子の試乗をさせたりしています。また、学内のバリアフリーマップを作成させて、グループで発表させたりもしました。

 この授業は、学生がシラバスを見て希望を出すのですが、今年はシラバス作成に力を入れ過ぎて、逆に「難しそう」と敬遠されてしまい、定員割れです(笑)。学生が興味を持つ“ほどほどのライン”というのは難しいですね。

具体的に世の中で役に立っていることはありますか?
転倒予防歩行訓練システム
転倒予防歩行訓練システム
 実際に世の中で製品化されているか、ということですと、歩行訓練機の転倒予防訓練装置があります。もともと日立から製品化されていた「2ベルト方式歩行訓練機」に「転倒予防歩行訓練システム」という機能を追加したのです。

人の歩き方をコンピュータシミュレーションで調べてみると、身体反応の悪さが歩行の不安定性に大きく影響していることがわかりました。その着想を起点に、転倒予防につながるトレーニングとして、ベルトの動きをランダムにかえてわざと転倒刺激を発生させ、その刺激に適応する歩行の訓練ができるようなシステムにしました。

この研究に興味をもったきっかけは?
 大学時代の恩師(慶應義塾大学山崎信寿教授)の影響が大きいですね。大学で研究室を選ぶときに、最初はロボットに興味があったので、ロボットをやっているところ、ということで山崎教授に話を聞きに行ったのですが、そこで「ロボットより生体のほうが面白いよ」と言われたのです。

ロボットを作る、というと、実際は”モーターの制御は?”とか”骨組みの強度設計は?”というような純粋な機械設計の問題が多くなってしまいます。“機械を作る”ことが好きな人はそれがいいのでしょうが、私はもともと生物型のロボットに興味があったので、山崎教授の言う“生体からのロボットへのアプローチ”に興味を持ちました。そのときに読んだ本がこの「生物に学ぶバイオメカニズム」(工業調査会)です。そういえば、小学生のころから、自由研究などで図鑑をみて昆虫の動きや体の仕組みを調べるのが好きでしたね。そのころから素質はあったのかもしれません。

* 今まで楽しかったことは?
 コンピュータシミュレーションで作った数学モデルがちゃんと動くときですね。というとオタクっぽいですか?(笑)でも、私の場合は、最終的にヒト型のモデルが歩いたりするので、うまくいかないと、空を飛んでいってしまったり、転んでしまったりするんです。ちゃんと歩いてくれるとうれしくなりますよ。

アニメーション
コンピュータシミュレーションで作成したモデル歩行
(アニメーション
* 現在の課題は?
 「統合化バイオメカニクス」と呼んでいますが、生体のさまざまな機能、感覚系や神経制御系、筋骨格系、呼吸循環器系などを統合的に捉え分析する研究分野の確立を目指しています。たとえば、視線と体の安定性の関係とか、運動をしたときに心臓がドキドキするのはどうしてか、といったことは、単に目や心臓だけを調べただけではわかりませんよね? 体の動きを統合的に調べる、最近ではこれを「ミクロ」の反対の意味で「フィジオーム」と言ったりしていますが、ぜひこの分野を確立していきたいですね。

また、もうひとつは、人間支援型ロボット技術の開発です。リハビリテーション支援ロボットや生活支援ロボットです。たとえば、ロボットアームでできた自動車運転システムとか。

* これからの夢は?
 少々堅くなりますが、マクロな視点から見たバイオメカニクスの発展とそれに基づく社会貢献です。先ほども言いましたが、今、世の中では細胞や分子、DNAといった「ミクロ」な視点でより細かく生物を見ていこうというのが主流ですが、私はその「ミクロ」な要素がどうやって全体になっていくのかということに興味があります。

高瀬氏
長谷氏
 もうひとつは、人間にとって、地球にとって優しい自然の摂理にあった人間支援です。ロボットに何をさせたいのか、ロボットを使って何がしたいのか、を人間の目から見て自然な形で進めていきたいと思っています。例えば、転倒して怪我をしないように、転びそうになったらロボットの手が家の壁からニョキッと出てきて体を支える、ということをロボット技術者はよく考えたりしますが、これはちょっと不自然ですよね。このままでは、そんな家がでてくるかもしれません。そんなことをしているうちに地球は滅びてしまうんじゃないか、と不安になってしまいます。私はそれよりも、自然の摂理にあった、人間を支援するロボットの開発に研究を生かせればと思っています。
関連ページ
これから数回に分けて長谷氏の研究を詳しく紹介いたします。ご期待ください。

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