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先端技術ラボ 可視化と立体視 [解説:第6回]
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第6回:立体視の今後
 最終回として、立体視の今後を展望したいと思います。

*1.コンテンツを見る時代から作る時代へ

 立体視システムを設置したものの、利用率が低く、コンテンツが不足しているという話を耳にすることが多々あります。一つのケースは、大学に多いのですが、立体視やバーチャル・リアリティ(VR)自体を研究目的とする利用しかなく、一部の研究者に利用が限られているというケースです。もう一つのケースは、博物館や研究機関の展示スペース、広報スペースに立体映像システムを設置しているケースです。設置時に業者に発注して立体視コンテンツ(施設や研究内容を紹介するものが多いですが)を作ったところまでは良かったのですが、その後、コンテンツを更新する予算がなく、陳腐化してしまうケースです。

 そこで、VRの学会や研究会では、魅力的なコンテンツが必要であるとか、コンテンツを流通させる仕組みが必要であるといった議論が盛んに行われています。しかしながら、こういった議論は、「専門家が作って一般人が見る」という枠組みを越えるものではありません。

 弊社ケイ・ジー・ティーが扱う汎用可視化ソフトAVS等が立体視システムやVRシステムに対応したことは、この枠組みを越える一歩でした。これまでは専用のプログラミングが必要とされてきたのに対して、一般の研究者が、自分の実験結果や解析結果を、日頃PC上で行っているのと同じ簡単な作業で、立体視システム上で見る事ができるようになりました。利用者が自分で自分のデータを見るという利用形態です。

 これをもう一歩進めれば、一般の研究者だけでなく、一般大衆が自分でコンテンツを作り、自分で見るという時代が期待できます。そのときにキーになるのが、立体映像用ビデオカメラだと思います。普段、旅行や結婚式、子供の運動会等でビデオカメラは活躍していますが、これが立体で見られれば(しかもできれば大画面で見られれば)、自分の目で見たものをそのまま再現できます。


【図1】カスタム電子製3DカメラKS55ZS

 図1は、カスタム電子製の3Dカメラ(*1)です。一見、ビデオカメラを2つ並べればよいだけに思えますが、2台のビデオカメラのスタート、停止、ズームを同時に操作するための仕組みが必要になります。こういったものが、安価に、コンパクトになれば、新しい時代が到来すると思います。

*2. 機器の価格の低下

 これまでの連載で述べてきたように、立体視専用の機器は、高性能である反面、高価格であるという傾向があります。プロジェクターが代表的な例です。第2回で紹介した立体視対応プロジェクターは、高解像度、高品質、多機能ですが、非常に高価です。市場が狭いから高価になる → 高価なのでさらに市場が狭くなる という悪循環に陥る傾向にあります。

 そんなことから、弊社はシリコンスタジオ(株)と共同で(協力:日本原子力研究所、宇宙航空研究開発機構)、一般用の小型プロジェクター2台を使って偏光方式の簡易立体視システムPortableVR(*2)(図2)を開発しました。解像度や色の再現性などは劣るものの、コンパクトでかつ、2台使っても安価なシステムになりました。このように、コストパフォーマンスという点では、専用か一般用かで、大きな境界があります。

【図2】PortableVRシステム

 しかしながら、この境界が打ち破られつつあります。一つの例が、第3回で紹介した、シャープ製の裸眼立体視ノートPC/モニターです。従来は、裸眼立体視モニターは何百万円もするものであり、気軽に買えるものではありませんでした。ところが、これらは実売価格がノートPCで30万円台、モニターで10万円台と、ちょっと高級なノートPC/モニターといった価格です。実際に、量産されている上位機種に視差バリア部分を追加したことにより低価格化が実現したそうです。

 もっと極端な例は、3年ほど前に話題になった、裸眼立体視ディスプレイの付いた携帯電話です。1つのカメラで撮影するので、正確な視差画像を作ることはできませんが、独自の画像処理技術により、それなりに奥行感のある立体視ができていました。解像度が低かったのと、その携帯でないと立体視ができなかったことが原因で、人気が続かなかったのだと推測しています。その当時に、象徴的な出来事がありました。第3回で紹介した裸眼立体視モニターSynthaGramの内覧会が東京で行われたときのことです。筆者は同僚(女性)と見学に行ったのですが、同僚が、米国の開発元から来た説明員に、自分の持っている裸眼立体視ディスプレイ付き携帯電話を見せたところ、3人いた説明員に取り囲まれ、「ちょっと見せてくれ。いくらするのか。どこで買えるのだ。」と、自分達の製品説明はそっちのけで質問攻めに会いました。普通の女性が普通に持っている携帯電話に裸眼立体視が採用されていることに天地がひっくり返るほどの衝撃を感じたようでした。量産品にうまく乗れば安くできるという良い例だと思います。

 第2回で紹介した、時分割の視差画像を右、左、2チャンネルに分けて出力することのできるグラフィックスボードNVIDIA Quadro FXも同じ例です。以前から、同じ機能を持った専用機器が数十万円で販売されていますが、このボードはその機能を組み込んで数万円の価格です。

 今年、業界に大きなインパクトを与えたのが、InFocus社の立体視対応DLPプロジェクターDepthQ(*3)(図3)です。立体視対応プロジェクターは高価だという常識をくつがえし、解像度は低いものの、液晶シャッターメガネとのセットで100万円前後で販売されています。第2回の記事を執筆してから7ヶ月しか経っていませんが、早くも状況が変ってきました。技術的な進歩で低価格化が実現したのか、それとも、戦略的な価格政策によるものかはわかりませんが、安くなる → 市場が増える → さらに安くなる という良いスパイラルに向かうことを期待しています。
【図3】立体視対応DLPプロジェクターDepthQ

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