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熊本水頼氏インタビュー
「次世代ロボットが未来の豊かな生活をつくる」
インタビュー会場に現れた熊本氏は、チェックのボタンダウンシャツにジャケットというラフな出で立ち。
質問にも明朗快活、ざっくばらんにお答えいただきました。
テーマはこれから連載記事をご寄稿いただく「二関節筋」。
お話は古代ギリシャへ飛んだかと思えば、ユニバーサルデザインの未来をも照射し、歴史、メカニズム、そして応用と、気が付くと二関節筋の全体像が目の前に展開されていました。
連載のイントロダクションとしてお読みください。
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1949年九州大学農学部卒。1960年京都大学講師、医学博士、教授を経て、1990年退官、京都大学名誉教授。同年富山県立大学工学部教授、2002年株式会社計算力学研究センター顧問。2004年(社)精密工学会生体機構制御・応用技術専門委員会委員長
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ロボットは、どこまで人に近づけるのでしょうか。
動物は生まれてすぐに歩きだします。つまり、歩行は、頭を使っているわけではなく、学習でもありません。一方、従来のロボットは、1つずつの関節を制御して「歩くことを実現」していますが、こうしたロボットの電気的な制御は、動作に時間がかかります。
わたしは、ずっと「二関節筋」の研究をしていますが、動物や昆虫にもある「2つの関節を同時に駆動する仕組み」をロボットに組み込むことで、柔軟ですばやく歩くことができるのではないかと、考えてきました。

二関節筋とは、どのようなものですか。
二関節筋とは、2つの関節をまたいで付着している筋のことで、2つの関節の運動に関わってきます。
例えば、腕の筋肉を考えるとわかりやすいでしょう。【図1】
上腕二頭筋の場合、いわゆる「力こぶ」と呼ばれる部分で、肩関節と肘関節をまたいでいます。
私たちが腕を曲げる(物を自分の方に引き寄せる)ときに使う筋肉です。
また、腕の外側には上腕三頭筋と呼ばれる二関節筋があります。 私たちが腕を伸ばす(物を押す)ときに使う筋肉です。 女性が気にする「二の腕ダイエット」がこれにあたります。
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このように腕を伸ばしたり、曲げたりとするような反対方向に作用する筋を拮抗筋と呼び、上腕二頭筋と上腕三頭筋のようなペアの筋肉を「拮抗二関節筋」と呼びます。 このペアの筋肉は、人間のみならず、カエル(動物)やカブトムシ(昆虫)にも存在し、複雑な歩行運動を瞬時に行っているのです。

二関節筋の利点を教えてください。
従来はロボット工学だけでなく、生体力学そのものにも、二関節筋は取り入れられていませんでした。
しかし単純に関節トルクを計測し解析するばかりでは、動物の身体運動を正しく解明できません。
わたしは二関節筋の働きを取り入れた理論モデルを作り上げ、実際に拮抗二関節筋を含む3対6筋の人工筋を使ったロボットアームを制作しました。
このアームは、理論どおりに360°の全方位にわたって完璧に出力方向を制御できることが検証され、しかも従来の関節単位の制御に必要だった計算量よりもはるかに少ない計算量で十分な制御が行えることが実証されたのです。【図2】
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【図2】関節座標系による制御の出力分布
(上)と二関節筋座標系による出力分布
(下)の違い (拡大図)
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カメムシのナーシング |
昆虫は小さな頭脳しかないのに、たくさんの肢の中の1本でグルーミングをしたり、ナーシングを行うことができますね。 単純な神経回路でも複雑な動作が行えるのは、二関節リンク機構が単一の入力信号で全方位・任意の方向に出力制御ができるためで、これは簡単な電気回路で代替可能です。
二関節筋を計算に入れた制御によれば、高速演算処理が前提になっていた従来のロボットよりも、はるかに簡単な処理で複雑な動作が可能になります。
しかも、動作の出力特性分布は従来よりも幅広い。
これが二関節筋協調制御の利点であり、これまでよりすばやく、柔軟な動作が容易に行えるようになります。
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今後、私たちの生活にはどのように役立つのでしょうか。
わたしの研究では、従来行われてきた外見的な動きの模倣ではなく、動物が本来もっている身体内の力学的機構を解明し、応用を図っています。
従って、ここまでお話ししたとおり、柔軟な制御機能を備えたロボットの開発が可能になります。
手術支援や災害救助、艦艇調査、福祉介護などの目的を果たすロボットが、より低コストに開発できるでしょう。
ロボット工学以外の応用としては、身体動作のメカニズムの解明により、リハビリテーションやスポーツトレーニングをより合理的に行うことも可能になります。
また、わたしは「ヒューマン・フレンドリー・デザイン」と呼んでいるのですが、障害者、高齢者など筋力の低下した人でも簡単に扱える自動車のハンドルや、水道レバー、錠前、杖などの設計を行うのにも応用できます。
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補助杖の握り手の提言:
現行(左)と提言(右)
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 関連ページ
これから数回に分けて熊本氏の研究を詳しく紹介いたします。ご期待ください。
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